学校が苦手だと感じる子どもの保護者が集い、交流をし情報交換などをおこなう「親の会」。
全国に、そのような活動があることを知っていますか。
親の会は、オンラインや実際に集まるなど交流のスタイルはさまざま。
福山市内にも複数存在するのですが、そのなかのひとつ「とことこすまいる」へ、先日参加してきました。
「とことこすまいる」とは
とことこすまいるは、不登校経験者や学校へ行くのがしんどいと感じている子どもの保護者が集う会です。
2023年7月から月に一度、福山市内で「おしゃべり会」を開催。
おしゃべり会では、お互いの悩みを共有し、情報交換をしながら交流を深めています。
同じような悩みを抱えているからこそ、聞きたいことや話したいことが気軽に安心して話せる場となっています。
「居場所づくり」への想い
運営者でもあり当事者でもあるAさん。
今から10年ほど前、学校へ行くのがしんどいと感じていたわが子のことで悩んでいました。
この状況は、親も子どもと同様にしんどさを感じることでしょう。
そんなとき、思いも掛けないことを言われます。
「自分のことで悩んでいるお母さんの姿を見るともっとしんどくなる。お母さんにはいつも通りでいて欲しい」
Aさんは、その言葉を聞いてハッとしました。
自分の姿や行動は、すべて子どもへ影響してしまうのだと気付いたのです。
「子どもを笑顔で見守ることが大切なんだ」
あるとき、同じ学区内に不登校の子どもをもつお母さんたちと知り合いました。
お母さんたちとはお互いの状況を話したり、情報交換をしたりと交流するなかで気持ちが前向きになっていきました。
すると、わが子への向き合い方や家族のようすに少しずつ変化があったのだそうです。
学校との連携もスムーズに取れるようになり、あらためて親同士のつながりや情報の必要性を感じたのだとAさんは話してくれました。
相談する場所はいくつか市内にあったそうですが、相談をしても支援先へつながることは難しいのだそうです。
情報収集していくなかで、「親の会」の存在を知ります。
Aさんは「これだ!」と思い、見つけたいくつかの親の会へ参加してみることに。
そこには、たくさんの人が集っていました。
参加する多くの人は、悩みやしんどさを抱えている状況です。
なかには、その場に来ること、話すことだけでも精一杯という人もいます。
限られた時間のなかで参加者全員が話をすることは難しく、自己紹介だけで終わることもあったのだとか。
また、親の会の主催者自身も問題を抱えていることが多く、継続すること自体が難しいのだそうです。
Aさんはある想いを抱くようになります。
「保護者同士がつながり、孤立させない」
「笑顔になれる居場所をつくりたい」
「家から出ることができない子どもに支援へつなげたい」
想いがあってもAさん自身も大変な状況だったので、なかなかスタートを切れずにいました。
会を開くきっかけになる出会い
子どもが成長するにつれ、だんだんと状況は落ち着いてきました。
そのタイミングで、信頼するお母さんたちに今まで胸のうちに秘めていた「居場所づくりがしたい」という想いを打ち明けます。
すると、みんな「自分が役に立てることがあるなら手伝うよ」と力強い言葉を掛けてくれたのです。
運営のやり方などを学ぶためママ友の紹介で、尾道市で「親の会」を運営しているCさんと会えることになりました。
Aさんたちは、ある日Cさんと一緒に食事をすることに。
そのときに「居場所づくり」をしたいという気持ちを相談しました。
相談をするなかで、「Aさんにはたくさんの協力者もいるし、必要な条件が揃っているからできるよ。とにかくやってみたら」と。
そのひと言で背中を押され、スタートを切ることになったのです。
Cさんの協力もありその後は、たくさんの周りの人に協力を得ながらトントン拍子にことは運び、2023年7月に第1回目を開催する運びとなりました。
おしゃべり会をするたびに、参加した人から「何か手伝うことはないか」とうれしい声が掛かり、現在、運営スタッフはAさんを含め9人にまで増えているのだそうです。
想いを大切に
とことこすまいるでは、みんなが安心して過ごせるように大切にしていることがあります。
- 意見は否定しない
- 発言は平等に
- 秘密は守る
おしゃべり会をおこなうときに、専門的な知識や経験をもつスタッフなどはその場にはいません。
答えを探し求めるのではなく、みんなで話をしながら一緒に考えます。
困ったときだれかに話を聞いてもらい、違った目線から意見をもらうと解決の糸口が見えることってありませんか。
しんどいときは、だれかの力を借りることもときには必要なこと。
おいしいおやつを食べ、コーヒーを飲みながら、おしゃべり会をゆるりと進めていきます。
忙しい日常から少し離れ、ホッとひと息つく時間もときには大切です。
スタッフはみんなが心地のいい居場所にするために、笑顔で明るい雰囲気になるよう心掛けています。
それぞれの想いを大切にして心が安らげるひとときが過ごせるように。
そんな想いがこの絵の中にギュッと詰まっているのだそうですよ。
出会いやつながりが心を動かす
おしゃべり会をはじめてからあまり時間は経っていませんが、たくさんの嬉しい出来事があるのだと聞きました。
会を重ねるごとに参加者のみなさんの表情がだんだんと明るくなり、雰囲気までも変わってきたそうなのです!
また、「来てよかった」との声も多く寄せられ、「子どもを信じることが大事だと気づいた」などの前向きなメッセージも。
また、運営者Aさんの身の回りでも変化があったのだとか。
それは、わが子がとことこすまいるの活動を応援してくれるようになったこと。
活動を始めた当初は、「何をしているのだろう」と不安気なようすでした。
けれども、最近では「がんばってね」の声掛けや、「いってらっしゃい」と玄関先まで見送ってくれることがあるそうです。
嬉しいですよね。
これまで活動してきたなかで、たくさんの人と出会いつながれたことが「宝」なのだと、Aさんは笑顔で語ってくれました。
おわりに
おしゃべり会が終わって帰るときに、みなさん穏やかな表情で笑顔だったことがとても印象的でした。
出会いは新たな発見や、新たな一歩を踏み出すきっかけになるのだと感じます。
これから、どんな変化が起こるのか楽しみです。